風の歌を聴け/ 村上春樹
1979年 群像6月号
p.11
もしあなたが藝術や文学をも求めているのならギリシャ人の書いたものを読めばいい。
p22
鼠はおそろしく本を読まない
p69
本なんてものはスパゲテイをゆでる間の時間潰しにでも片手で読むもんさ。
p73
犬や馬は少しは笑います
p107
冷たいワインと温かい心
p110
いっぱいに開けた窓から涼しい風がやっと少しずつ入ってきた。
p123
僕は彼女の写真を一枚だけ持っている。裏に日付がメモしてあり、それは1963年8月となっている。
軽くあわされた唇と、繊細な触角のように小さく上を向いた鼻、自分でカットしたらしい前髪は無造作に広い額に落ちかかり、そこからわずかに盛り上がった頰にかけて微かなニキビの痕跡が残っている。
p127
僕は山の手特有の曲がりくねった道をしばらく回ってから、川に沿って海に下がり、川口近くで車を下りて川で足を冷やした。
p128
微かな南風の運んでくる海に香りと焼けたアスパルトの匂いが、僕に昔の夏の思い出させた。女の子に肌のぬくもり、古いロックン.ロル、洗濯したばかりのボタン.ダウン.シャツ、プールの更衣室で喫った煙草の匂い、微かな予感、みんないつ果てるともない甘い夏の夢だった。そしてある年の夏(いつだったろう?)夢は二度と戻っては来なかった。
p137
そんな風に見えるのさ。昔からそんな気がしたよう。優しい子なのにね、あんたにはなんていうか、とっかに悟り切ったような部分があるよ。。
p140
今、僕の後ろではあの時代遅れなピーター.ポール&マリーが唄っている。
p149
人並み外れた強さを持ったやつなんて誰もいないんだ。みんな同じさ。何かを持ってるやつはいつか失くすんじゃないかとビクついてるし、何をもってないやつは永遠に何ももってないんじゃないかと心配してる。 みんな同じさ。だから早くそれに気ずいた人間がほんの少しでも強くなろうって努力するべきなんだ。振りをするだけでもいい。そうだろ? 強い人間なんてどこにも居やしない。強い振りのできる人間が居るだけさ。
p155
貝殼さえもなかった。井戸だけである。
p157
急にじゃないよ。君が井戸を抜ける間に約15億年という歲月が流れた。君たちの顔にあるように、光陰矢の如しさ。君の抜けてきた井戸は時の歪みに沿って掘られているんだ。つまり我々は時の間を彷徨っているわけさ。宇宙の創生から死までをね。だから我々には生もなければ死もない。風だ。
p167
腹を裂いてみると、胃の中にはひとつかみの草しかはいってはいなかった。僕はその草をビニールの袋に入れて家に持って帰り、机の上に置いた。それでね、何か嫌なことがある度にその草の塊りを眺めてこんな風に考えることにしてるんだ。何故牛はこんなまずそうで滲めなものを何度も何度も大事そうに反芻してたべるんだろうってね。
p172
一人でじっとしてるとね、いろんな人が私に話かけてくるのがきこえるの。
p174
突堤にぶつかる小さな波の音を聞きながらずっと黙っていた。それは思い出せぬほど長い時間だった。
p180
12、13。。お父さんが病氣になった年。それより昔のことは何一つ覚えてないわ。ずっと嫌なことばかり。頭の上をね、いつも悪い風が吹いてるのよ。
p183
風の中を歩くこともできず、誰に愛されることもなく、何十年もかけてここで年老いて、そしてひっそりと死んでいくのかと思うと我慢できないほど悲しいのです。
p192
左手の指が4本しかない女の子に、僕は二度と会えなかった。僕は冬に街に帰った時、彼女はレコード屋をやめ、アパートも引き払っていた。そして人の洪水と時の流れの中に跡も残さず消え去っていた。
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